人生と旅
毎日同じことの繰り返し、その本質は辛さ、一人で歩くには長すぎる、という3つのことから、人生と旅は似ていると思いました。
人生と旅は似ている
昔の人は、「人生は旅だ」「旅は人生そのものだ」などと言って人生を旅になぞらえたそうですが、日本を歩いて旅しながら、私も、「人生と旅は似ている」ということを考えました。似ていると思ったのは次の3点です。
(1) 毎日同じことの繰り返しである。
(2) その本質は「辛さ」である。
(3) 一人で歩くには長すぎる。
毎日同じことの繰り返し
人生は同じことの繰り返しです。もちろん毎日が新鮮な波瀾万丈の人生を送る人もいるでしょうが、ルーティンワークという言葉もあるように、基本的には毎日同じことの繰り返しなのではないでしょうか。
歩く旅も基本的に毎日同じことの繰り返しでした。短い期間の歩き旅なら新鮮さに満ちあふれていたでしょうが、100日以上も歩いていると毎日の単調さの繰り返しに精神的に疲れました。
現在、私は非常にやりがいのある仕事について、家庭も充実し、特に大きな不満のない人生を送っていますが、やはり時に毎日の単調さに飽き飽きすることもあります。
そのような時は、この旅のことを思い出し、「旅の非日常もそれが毎日になれば日常となるんだ」と思い、毎日の単調さに負けないようにしています。
その本質は辛さ
樋口一葉は、人生そのもの、生きることそれ自体に辛さというものを見出したときから、「にごりえ・たけくらべ」といったような秀作を次々と生み出したそうです。また、多くの宗教が自ら命を絶つことを戒めている理由の一つは、人生という修行の場から逃避してはならないということだそうです。
人生、そして生きていくということは、それ自体が辛いということを本質としているのではないでしょうか。
旅の辛さについては、若山牧水の
「幾山川 越え去りゆかば 寂しさの 果てなむ国ぞ けふも旅ゆく」
という短歌を紹介します。
私は、広島の山中でこの句碑に出会ったとき、共感して涙が出ました。それくらい長距離の歩き旅とは辛いものなのです。
一人で歩くには長すぎる
今回は、111日間かけて日本を一人で歩いたわけですが、一人旅は気楽な分、寂しさを感じることもありました。私は、基本的に一人旅が好きなのですが、さすがに今回は長旅だったので、人恋しくなった時期もありました。
そんなことを考えていたら、人生も同じようなものじゃないかという気がしました。一人で歩いていくのは気楽でいいけれど、やはり一緒に歩いていく人がほしいときもある。長い人生、一人で歩くには長すぎる、ということです。
人生において配偶者のことを「伴侶」と言いますが、辞書で引いてみると、これは全く旅の同行者のことをさす言葉でもあります。今、結婚して2児の父ですが、長い人生、伴侶がいるのは有り難いと感じています。