イシダタミと焼肉

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歩きながらよく歌う歌の一つに「出航-さすらい-」(寺尾聡)がある。今日は、この歌を歌う度に思い出す女性に会いに行く。久しぶりに会う彼女は…。

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歩きながら歌う歌

歩くという行為は、極論を言えば2本の脚でできるので、歩いている時は結構ヒマなこともある。そんな時には、歌を歌いながら歩くこともよくある。特に天気がいい日に広い大平原の一本道で大きな声で歌いながら歩いていると最高に気持ちの良いものである。

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寺泊港

お気に入りの歌としてはやはり旅の歌が多く、「岬めぐり」や「遠い世界に」、「歩いていこう」、「思えば遠くへきたもんだ」などがある。寺尾聡の昔のヒット曲に「出航-さすらい-」という歌があり、これもよく歌う歌の一つであるが、この歌を歌うと必ず思い出す女性が一人いる。その女性を今日は訪ねて行く日なのだ。

イシダタミ

歌を通して女性を思い出すというと、昔何かしらの恋物語があり、その時にこの歌が流行っていた-ととるのがまあ一般的な考え方であろう。しかし期待外れで申し訳ないが、私と彼女の間にはそのような過去はなかった。ただこの「出航-さすらい-」という歌の2番の出だしに次のような歌詞があることがそのただ一つの原因なのだ。

「古い石畳(いしだたみ) 過ぎ行く時を見てる~」

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小出の山並み

そう、彼女の名前は石田民子(いしだ・たみこ)。私の大学特代の親友の彼女だったこともあって彼女とはずいぶんつきあいもあった。しかし彼女は今では郷里の新潟で小学校の先生をしている関係で、会うのは卒業式後にキャンパスで偶然会って以来2度めだった。今日の予定を柏崎で消化した私は、彼女との待ち合わせ場所の小出へと汽車で急いだ。

再会

久しぶりに会った彼女はとても大人に見えた。学生時代とは違ったショートソバージュの髪が時の流れを感じさせた。再び降り出した夜の雨の中、彼女の下宿に荷物を置かせてもらって食事に出ることにしたが、私はこの辺のことは全くわからないので、彼女に地酒が飲めて何か食べられるところということでお任せした。

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下宿の前で

彼女は焼肉屋へ連れて行ってくれた。東京を旅立って以来初めて食べる焼肉はとても美味しく、地酒の「吉野川」もなかなかいけた。注文から何からてきぱきとこなす彼女の姿はとても印象的で、私の周りにはあまりいないタイプの女性だったので私は感心しっぱなしだった。

結局その夜は彼女の好意で下宿を空けて私を泊まらせていただき、彼女は友人宅へ泊まるという便宜をはかってくれた。しかも次の日からの連休は実家へ帰る用事があるということで下宿を2晩も貸してくれ、おかげで私は次の日はこの旅初の完全休養日をとり、後半戦への気力と体力の充実に務めることができたのであった。